社長のためのスピーチトレーニング 水の飲み方

水の飲み方

人前で話すと喉が渇きます。声を出しつづけるプレッシャーと緊張感。
でも、衆目にさらされつつそのなかで水を飲む。非常に個人的な生理的欲求である「喉を潤す」という行為はとても恥ずかしいものです。男性よりも女性はとくに……。
しかし、長時間のスピーチには必ず必要な行為です。
備えあれば憂いなし。
そのための準備をしておくべきでしょう。
以前はよく、演台にちいさなお盆に乗せたガラス製の水差しがセットされていたものですが、最近はペットボトルが多いようです。
気の利いた会場準備担当者がいらっしゃれば、そのペットボトルのわきにガラスのコップが添えてあるはず。
最悪なのはペットボトルだけという場合。
その上、よく冷えていたせいかペットボトルの水滴が演台を濡らしている。
準備の第一段階は「水を飲む人(話し手)」と「それを見る人(聞き手)」双方の視点から考えてほしいものです。

次に肝心なことは、水の飲み方です。
聞き手は、意外に話し手の水の飲み方が気になるものです。
長い講演ともなると、聞き手のほうも長い時間の集中は辛いもの。適度の話し手の水飲みは、一種のリフレッシュでありブレイクタイムともなるのです。
聞き手の目線がいっせいに話し手に集中しています。
そのなかでアゴを聞き手のほうに上げてゴクゴクと一気飲み。
ビールではありませんから、喉元を見せるのは目立ちすぎるアクションとなります。
さらにこのとき、コップが用意されていないとなると、ペットボトルの水をラッパ飲みしなければなりません。
これだけは絶対に避けてください。
だからなおさらコップの用意が必要なのですが、でも、紙コップやプラスチック製では簡単に倒れてしまって演台を濡らすなどしてあわてること必至。必ずガラス製にしてください。
主催者に確認し、演台を設営する際、用意してもらいましょう。
私のお客さまでじつに麗しくエレガントに水を飲まれる方がいらっしゃいます。
映像でご覧いただけないのが残念ですが、どのようになさるのかというと……。

  • 話の途中、おもむろに、ゆっくりとグラスに水を注がれる。
  • 落ちつきはらって、す~っとひと口。この間、会場に流れるしばしの空白。
  • しかし、何事もなかったかのように、静かにお話に戻られる。

水を飲むこと自体が、お話を含めたひとつの流れになっていて、それはもう実にお見事。
このエレガンスさを支えているのは、一連の身体の動きです。

  • 水を飲む際に、アゴを上げないので顔の角度が変わらない。
  • 顔を動かすのではなく、グラスを傾ける。
  • 動かすのは腕。それも肘から下だけ。

余計な所作がないのです。
敬服してしまうほどの飲み方ですが、世間にはいろいろな飲み方がありまして……。

  • 水を飲む口元を片手で隠す……実際にはあまり見かけませんが(いや、号泣会見を開いた地方県議がいましたっけ)演台でこのアクションをすると相当に目立つだろうと思われます。
  • 演台に立や否や、すぐに飲む……それならステージの袖でひと口飲んでからお出になればいいのに。人前に出た最初の行為が水飲みでは「緊張していて喉が渇いています」と公言しているようなものです。その一方「よ~し、話すぞぉ」という意気込みを示すことにもなるでしょう。落ちつかない若々しさ、鼻息の荒さ、そんなイメージをもたらす効果はあります。

話し手の一挙手一投足を聞き手はよく見ているものです。
何気ない話し手の行動が話の内容より記憶に残るようだと、それは結局「ノイズ」になってしまいます。
話し手と聞き手のコミュニケーションは、なにも言葉だけではありません。
話し手は言葉意外の「武器」を駆使して聞き手の目や耳、あらゆる五感に訴えて伝えたいことを伝える。