社長のためのスピーチトレーニング 上手な間の取り方

間がいい話

メリハリがある=「間」が良い

” I have a dream!”と演説したキング牧師。じっくり音源を聴いていると、もう演説というより、詩を吟じ歌っている状態に近いと感じます。高く声を張り上げて言葉を伸ばしたり、素早く切って間を作ったり。変化があってメリハリがある。だから心地よく聞けるのですね。

これは英語ならでは、でもあります。

日本語はそもそもメリハリが穏やかな言語。百人一首などを吟ずるとわかりますが、なんとも穏やか、和やかな節回しですよね。そんな日本語ですから、スピーチでメリハリをつけるには普段の会話よりも2〜3倍は思い切って表現しよう、とするくらいでちょうど聞き手にわかるレベルになります。

もしもキング牧師が日本語でスピーチしていたらどうなったでしょうか。ちょっと聴いてみたいです。

 

間を取る=大切な言葉の前後に一瞬沈黙する

間をとって話すことは難しくありません。こんな風に練習できます。

  • スピーチの中の大切な言葉に「 」をつける
  • 声に出して話す際、「 」の前後(どちらかでも良い)に一瞬沈黙する
  • 長さは、一呼吸、長くても3秒くらいが目安

 

(例文)

  • 今年のテーマは原点回帰です。
  • 今年のテーマは「原点回帰」です。

原点回帰に「」をつけました。まずは普通に発してみる。次に、「」の前後またはどちらかに一瞬沈黙して発してみてください。違いが感じられましたか?

このようにして行っていくと、だんだん「こうするんだな」と感じがつかめてきます。最初はわざとらしいと感じるかもしれませんが、やがて心地よさがわかり、自然と間を取りたくなります。

 

沈黙が怖いとき

間を取るのが難しい方は「沈黙が怖い」と感じていらっしゃるのではないでしょうか。

「沈黙すると ”話に詰まった” と聞き手に思われているような気がして・・・」多くの方からこのようにお聞きしました。

ですが、その心配はご無用です。話し手が一瞬沈黙しても問題ありません。逆に「何か起こったかな?」と興味を引きつけられます。聞き手は「聞いてよかった」と思いたいのですから変化に富んだ話でドキドキさせられたりすることは大歓迎。少し驚きがあったりしないと、刺激がありませんから。

沈黙を恐れるあまり、つい喋りすぎたり、早口になったりする場合も多く見かけます。本来自分が持っている話の力、自分の話し方を壊してしまいますので、沈黙は恐れない。

「沈黙は聞き手へのお楽しみ」

聞き手は変化を好むもの。勇気を持って沈黙してみてください!

社長のためのスピーチトレーニング 手の位置、手のやり場

手の位置

手のやり場に困る

姿勢良く立つことはスピーチの「基本のき」。ですが、試しにやってみると「まっすぐに立つ」は意外と難しいものです。プロのダンサーも踊らずにただ立つことが一番難しいといいます。

これは一体なぜでしょう?

理由の一つは「手のやり場に困るから」だと思います。

このブログをお読みいただきながら、ちょっと立ち上がって、まっすぐに立ってみてください。

両方の腕はどうなりましたか?

多分自然と両脇に垂れていると思います。そう、それが自然な立ち方です。本来、腕はこのように脇にあります。この状態でずっと立ち続けられれば良いのですが、特にスピーチ中はどうも手持ち無沙汰になる。すると手を落ち着かせたくなってやり場に困る。やり場を無くした手はどうなるか。

それでは先ほどの続きで、手が落ち着く先を見つけてください。

多分下記の3つのうち、どれかになったのではないでしょうか。

手を前で組む。手を後ろで組む。腕組みをする。

手持ち無沙汰を解消するため、手が自然とそうなったですが、実はこれらはスピーチには向かない手。なぜかというと・・・

  • 手を前で組む……黙って立っている時には自然と手がこうなりますね。「黙っている」つまりスピーチする状態とは反対の体勢。「手は第二の口」ですが、両手が組んであって手のひらが何もできない、手が自由に語れない状態です。例えば深呼吸したいとき、手は自然と広がっていますよね、前では組んでいません。声を出したり話したりするのには向かない手の位置なのです。「アダムとイヴ」のアダムが前を隠すために組んだ手の形と同じという意味で「イチジクの手」とも呼ぶそうです。
  • 手を後ろに組む……小学校の校長先生がこうしていたような記憶もありますが、これも良くありません。何かを陰に隠し持っている、隠し事をしている印象につながります。
  • 腕組み……これは自己防衛のポーズ。相手を拒否している印象でコミュニケーションしづらい印象を与えます。ぎゅっと体を締め付けますから、良い声を出そうとしても呼吸が苦しくなるポーズです。アーティストや映画監督などが腕を組んで写真に収まっているのをよく見かけますが、スピーチ場面では腕組みはしていませんね。

やり場をなくした先の手が、物理的に話す行為を弱めてしまうのです。

ちょっとショック・・・ですね。

こうならないためにどうするか。

 

手に自然と語らせる

まずは腕を脇に垂らしてまっすぐ立って話す。肚を決めてください。そうすればできます。そのまましばらく話してみましょう。そして、手に自由を与えてください。すると、やがて手が自然と動き出し、語り出すかもしれません。それで結構です。これは「スポンテイニャスジェスチャー」と言って、話に合わせて手が自然と動くこと。手にも語らせながら、話を進めましょう。自然とアクティブなスピーチになってきますね。ただしたくさん動かしすぎないようにしましょう。

また、この自然なジェスチャーができるようになった段階で、左右の手の指を前でつなげる程度に、軽く手を前で組むのでしたら問題ありません。手は自由に語っている段階ですから。

いわゆるポーズ的な「基本のジェスチャー」は種類がありますが、それは、また別途ご紹介します。

手は前で組まない。自然に語らせる。そのために!肚を決めてしっかり良い姿勢で立つ。腕はリラックス。しっかり習得して下さい。

社長のためのスピーチトレーニング 目線、どこを見て話す

目線の使い方

普段、自分がどんな風に相手や物を見ているか?あまり気にすることはないのでは、と思います。ところがスピーチになると「目は口ほどにものを言い」どこをどう見るか。聞き手をどう見るか、これが話の伝わり方に大いに関係をするのです。

 

見ているところに声が届く

キャッチボールをするとき、相手を見て投げるのが普通でしょう。バスケットボールでもゴールを見てシュートします(NBA選手なら目線と違う方向にシュートできるかもしれませんが、これはきっと特殊能力)。行動が向かうところを人は見るのです。

スピーチする際も同様、見ているところに声=スピーチが届きます。聞き手をみれば聞き手に声が届く、手元の原稿を見て話せばボソボソと独り言のスピーチ、ちなみにこれは一番伝わらない伝え方。声の出し方云々以前に、まず聞き手ではなく原稿だけを見ているからこうなるのです。一文読み終えたら顔をあげて聞き手を見る。これだけで独り言ではなくなります。原稿ありきのスピーチでは、ぜひ気をつけてください。

 

迷いが目線に表れる

緊張や恥ずかしさがある場合、聞き手を見ることができません。また、話す内容が決まりきっていないと目が泳いでしまうことがあります。目は正直、心の窓ですね。この場合はまず内容を整えることが先決なのですが、ちょっと意外な方法もあります。思い切って聞き手をしっかり見る!これでうまく行くことがあります。言いたいことがズバッと話せたり、恥ずかしさを乗り越えられたりします。冒頭に書いた「見るところに声が届く」を行うことにより、心理的な迷いを乗り越えさせるのだと思われます。スピーチトレーニング では「はい!やってみましょう!」とチャレンジすると、かなりの場合、出来ます。ご本人も「思ったより、やれば出来るんですね」と感じられることが多いようです。

 

大基本「意図を持って全身で聞き手を見る=目線を送る」

スピーチでは会場が広く、遠くに聞き手がいる場合もあります。どの聞き手からでも「あ、話し手はこちらを見ているな」と聞き手をがわかるようにする必要があります。そのためには「目で見る」だけではなく「全身で聞き手を見る」意識に切り替えてみてください。広い草原や大空を見るとエネルギーが湧いてきますよね。そんな風に、聞き手全体を全身で見るのです。こうすると自分にもパワーが生まれます。

 

目線の技術

ここまでお伝えしたところで、具体的な目線3種類をご紹介します。目的によって使い分けると良いでしょう。

 ①8の字目線……会場に大きな8の字をゆっくり描くイメージで、全体を見る。

全体の聞き手を見ている印象で、常時使える目線です。会場の四隅を見落とさないようにすると、自然と8の字になります。

 キメ目線……呼吸を止めて一か所をぐっと1〜2秒見つめる。

強く伝えたいメッセージを話す際に使うと、感情が伝わります。

 ③神様目線……自分の目の高さより少し上を見る。

ビジョンや夢を語るときに。ちょっとドラマチックな瞬間になります。

 

同じ人ばかり見ない

聞き手を見る上での注意事項です。反応してくれる聞き手、笑顔で聞いてくれている聞き手がいると、つい、その人ばかり見てしまいがちです。そんな聞き手につい引き寄せられてしまうのですが、そこから8の字目線を使って、他の人へと目線を移して行きましょう。

たとえ話し手のことを見ていないように見えても、聞き手は話し手のことをしっかりと見て聞いています。ですから、スピーカーがまずすべきことは聞き手をしっかりと見ること。漠然とではなく「伝えよう」の強い意志を持って、聞き手に目線を届けてください。

 

社長のためのスピーチトレーニング 顔の見せ方

顔の見せ方

聞き手はどこを見ているか

スピーチトレーニングでは、まず全身鏡の前に立ち「ご自身の姿をしっかりご覧ください」と申し上げます。少々照れ臭いような方もいらっしゃいますが、これは人前に出るには欠かせない儀式のようなもの。大切な瞬間です。

聞き手はステージで話すスピーカーの、どこを見ているでしょうか。

もちろん「顔」です。

姿勢良く立って顔をきちんと相手に見せる。これが最初の勉強です。

 

Vゾーンを見せる

ここでいう「顔」とは、目や鼻など顔面部分だけではありません。スーツのボタンを留めてネクタイが見える辺り、“Vゾーン”から上全体が「顔」だとご理解ください。

Vゾーンは顔の土台。土台と顔がバシッと決まっているのが「良い顔の見せ方」です。

 

鼻を中心に意識する

顔の中心である鼻を意識すると「顔の佇まい」がはっきりします。「鼻持ちならない」「鼻が高い」「鼻をへし折る」などの言葉があるように、鼻は人間のプライドとも関係のある部分なのでしょう。また、鼻できちんと呼吸できていることも大切。話すことには呼吸の仕方が影響しますから、鼻を意識するついでに気持ちよく呼吸できていることも確認すれば、声を出して話す準備にもなります。

聞き手はいつも話し手の顔を見ています。ですから、お辞儀の前後はもちろん、話している最中はなるべく聞き手に顔を見せるようにしましょう。スライドを使ってプレゼンする際、ついつい目線がスライドの方ばかりになることがあります。スライドとお見合いしているようにならぬよう、話の節々で聞き手の方を見、あなたの顔をきちんと聞き手に見せましょう。

スライド資料を見せたいがために、会場の照明を暗くすることがあります(会議室など)。こうすると話し手の顔が見えづらい。聞き手は、話し手の顔がよく見えないため話に集中できず、やがて眠くなります。聞き手は話し手の顔を見ながらプレゼンを聞きます。ぜひ照明には工夫をしてください!

会場が暗かったり大きかったりすると、顔をしっかり見せることができなくなります。その場合はVゾーンだけでなく、顔を含めた全身を聞き手に見せることに切り替えましょう。これがいわゆるスティーブ・ジョブズ風の、全身を見せてスピーチする、あのスタイルです。

 

全身が顔になる

全身を見せることは顔部分を見せること以上に大変なこと。姿勢、歩き方、全てが丸見えになります。日常での立ち居振る舞いや生活の仕方が透けて見えます。ですが、その分聞き手との関係性がぐっと強くなります。

  • 全身を見せられる自信=聞き手には「安心感」がもたらせる
  • 演壇無し、障害物がない=物理的・心理的に「距離感」が縮まる
  • 全身で動く=表現が生き生きと伝わり「躍動感」が出る

 全身を見せる際に気をつけたいこと、そしてすぐ実行できることは以下。シンプルです。

  • 姿勢を良くして、深い呼吸をする
  • 何があっても堂々とする
  • 頭の先から爪先まで、身だしなみを整える

キマリすぎているかな、くらいにキメて、お顔を見せてください。テレビ番組の出演者に収録スタジオでお会いすると「え、そんなにバッチリ決めているの」と思えるくらいに上から下まできれいに整えています。なぜかというと、テレビのフレームに入ると全てがくっきりと映し出されるからです。額縁に入れる前と入れた後の絵画は別物に見えることもあります。額縁の効果は大きく、それがテレビのフレームでも起こるのです。スピーチにおいても、舞台というフレーム、あるいは会場前方というフレームの中にあなたが収まることになりますから、キマリすぎているくらいにキメておいて調度良いです。

キマリすぎた自分にはちょっと慣れないかもしれません。だからこそ、普段から全身鏡で自分を客観視する、その目を鍛えていただきたいのです。全身鏡の儀式は、聞き手の目線で自分自身を見る準備でもあるのです。

経営者、特に男性は普段、髪を整えたりヒゲを剃ったりするくらいしか鏡を見ないのではないでしょうか。ですが、スピーチにおいては、顔そして全身を見られています。堂々と自信を持って自分を見せられるよう、日頃から備えましょう。

 

話すことが大嫌いな経営者の方がいました。大きな鏡があるリハーサルスタジオで練習をし、動画にご自身が写されているのも見、様々なトレーニングとスピーチ本番の日々を経て、やがてスピーチの名手になられました。

トレーニングが完了されたとき、こんな風におっしゃいました。

「全身鏡の中の自分の向こうに、聴衆が見えるようになった。私も伝わる話ができるようになったんですね」

社長のためのスピーチトレーニング 言語以外で発信する

言語以外に意識を向ける

言語と非言語、両方で「スピーチ」

このブログに書いている項目は、水の飲み方、顔の見せ方など、スピーチの内容そのもの以外が多くあります。もちろんスピーチですから言葉なしには成り立ちませんが「どう伝えるか」言葉以外が大きく影響します。まずはこのことに気がつけると、スピーチ力が変わってきます。

  • スピーチは「言語と非言語」両方で成り立つ
  • 「言語」スピーチの内容、言葉
  • 「非言語」話し方、声、目線、ジェスチャー、表情、服装、言葉以外の全て

 

言語と非言語を料理に例えるとこうなります。

  • 言語部分:食材、料理
  • 非言語部分:盛り付け方、サービスの仕方、おもてなし、店の雰囲気、接客、価格

<食べるのは「料理」そのものですが、盛り付けやサービスも味に影響します。いくら美味しい料理でもサービスが悪かったらまた食べに行きたいとは思いません>

これをスピーチに置き換えると、

<スピーチで聞くのは「言葉」ですが、伝え方や表情、ジェスチャーなどもスピーチに影響します。いくら良い内容でも、伝え方が悪かったらまた聞きたいとは思いません>

いいスピーチは内容も伝え方も良い。両方が必要です。

 

非言語に無意識な日本人

日本人はこれまであまり非言語に意識が高くなかった、と感じます。かつて会社員だった頃、日本人上司のスピーチにおもしろさを感じたことはありませんでした。プレゼンテーションのスライド資料は文字で埋め尽くされ、念入りに準備してあります。よくみれば興味深い内容なのですが、聞いている部下には何も響かない。なぜかというと、非言語が弱かった。メリハリもないし笑顔もない。自分らしさが感じられず、ただ声を出しているだけのプレゼン。服もパリッとしてないし、やらされている感?があるような・・・そんな風に感じて、肝心の話の内容も入ってきませんでした。

日本人の発信力が弱いと言われますが、多くは非言語ではないでしょうか。正しく言うと、できないのではなくて知らない、経験したことがない。だから無意識にならざるを得ないのでしょう。

 

非言語は実体験で強くする

よくトレーニング中の方がこんなことをおっしゃいます。

「この前、ある会合に出たんですよ。そこで何名かの講演を見てきました。もう全然伝わってこなくて。前はただそれで終わりでしたが、今は、自分だったらこうするな、とか、色々分析しながら見れるんですよね。トレーニングで教わったときにはイメージがつかないこともあったんですけど、人がやるのを見て、ああ、これだな、と、よくわかりました」

非言語の力を高めるには、まずは見たり聞いたりして経験することだと思います。この方のように、意識して経験すると受け取れるものが違います。それだけで学びになる。言葉は頭の中で考えられますが、非言語は目線にしろジェスチャーにしろ、全て行動です。従ってやはり行動を通して学ぶことが一番。人さまの振りを見て我が振りを直す、こうして互いに高め合えって行けば、日本人も非言語に強くなれるはずです。

スピーチ現場に限らず、映画を観る、イベントに行く、スポーツ観戦する、レストランへ出かけるなどして人の動きや立ち居振る舞いを観察するのも立派な非言語習得の一環でしょう。これならスピーチトレーニングも楽しいですね。ぜひ実践してみてください。そこでも経験がのちにご自身の「引き出し」となって将来大いに役立ちます。

社長のためのスピーチトレーニング スピーチ KISSの法則

スピーチKISSの法則

 

「痛みに耐えてよく頑張った! 感動した!」

元首相小泉純一郎氏が大相撲の表彰式で放った一言。もう伝説のように残っています。「自民党をぶっ壊す!」「聖域なき構造改革」ワンフレーズの魔法使いのような方でした。

 

小泉さんの演説・スピーチの最大の特徴は「短い」

ワンセンテンスが短いから「分かりやすい」

そして「声が大きい」

さらに「ジェスチャーが大きい」

それを「繰り返す」

加えて「風貌も忘れがたい」

言葉が残っているのですが、それを放ったときの姿も残っている。メディア活用が巧みでした。

 

英語のプレゼンテーション学習の際に出てくる言葉、KISSというものがあります。

Keep it short and simple.

意味は「簡潔に」という日本語がぴったり。

スピーチはKISSで話せ!と遠い昔に習ったことを思い出しました。

 

小泉さんのスピーチはまさにそれです。もうこれ以上簡潔にできないくらい、簡潔。

余計なものは何も含まれていないのです。

 

言葉が短ければ、その中に全ての想いを込めよう、つまり、全ての声の力も注ぎ込むことができますから、自然と声は大きくなり、言葉を発するインパクトは大きくなり、よってジェスチャーも大きくなり・・・と芋づる式にKISSが発生するのです。

日本語はそもそもぼんやりしている表現が多いですから、これを行うには、かなり大胆な外科手術をするようなもの。あまりに言葉を簡潔にして、要らないものを切り捨ててしまうと、意図が通じなくなるのでは?というリスクを考えざるを得ません。

ですが、聴く側からすると、その短い言葉の中に、いろいろな想像を巡らせることができるんですね。

>痛みに耐えてよく頑張った!感動した!

>そうそう、本当に痛そうだったけど、そこをよく耐えてたよね、涙が出そうでした、痛くありませんでしたか、いつ治るのかわからないけど養生してくださいね。私たちはその戦いぶりを見ておかげで本当に心を揺さぶられました。ありがとうございます。

KISSバージョンの中には、上記のような長い言語が詰まっているというわけです。KISSを聞いた際には、この長い言語が聞き手の中に浮かんでくる。想像が働く。心が動く、ジーンとくる・・・忘れられなくなる・・・。

簡潔に話すと、逆に想像力が働いて、心が動いて面白く聞けるのです。

思い切って、言葉を外科手術してKISSの表現方法に挑戦してはいかがでしょうか。

ポイントは、ただ切り捨てるのではなく、核となる強い言葉、圧縮されたパワーがあるKISSな言葉が見つかるかどうか。

巷の広告では、プロのコピーライターが数えきれないほどの候補コピーから、たった一本を生み出すのです。大河の一滴のような、一本。それが巷に出てくるのですから、実はKISSな言葉を生むのは、それほど簡単ではないかもしれません。

ですが、やる価値あり。やっていくと見つかります。

社長だからこそ、KISSが見つかる。これは確信しています。

肚の底に沈んでいるKISSな言葉、見つけてみてください。

 

これであなたも、言葉の魔法使い・・・。

 

Keep it short and simple.

社長のためのスピーチトレーニング 影響力は語尾次第

言葉選び

思っているのか、決めているのか

「今回の取り組みに関しては、再度検討すべきだと思います」

「今回の取り組みに関しては、再度検討すべきです」

同じように聞こえる2つの文、違いは語尾だけです。あなたが聞く側だったら、どちらの言い方に、より納得できるでしょうか。

後者ははっきり断定しています。一方、前者は「〜と思います」と加えており、断定するよりも少し弱い印象を受けます。

 

自分に正しい言葉選び

断定したいのなら、後者の方がパワフルに聞こえるのは一目瞭然。ここでのポイントはどちらを選ぶか、ではなく、「自分の考えに適した言葉を適切に選んで発したかどうか」。後者のように断定して言ったつもりだったのに、つい癖で「~と思う」をつけてしまった。もしもそうでしたら、ぜひご注意ください。

語尾まで意図を持って選ぶ。この言葉に対する鋭敏さが、スピーチの影響力を変える一つの要素です。

きっちり選ぶのは、楽なことではありません。話すときの言葉選びはほぼ即興ですので、さらに難しい。

 

言葉を選ぶ方法

そこで、どうやって選ぶか、です。

想いに適した言葉を話そうとするには「落ち着いて話す」「ゆっくり話す」。

こうしていれば、慌てることなく選ぶことが楽にできます。

ごく当たり前のことです。だからこそ、改めて大切なのです。

 

私が色々と教えを乞うている経営のH先生は、動きも、話すスピードも緩慢です。まるで大河が流れているかのよう。ですが、出てくる言葉はいつも

グサッ!

と音を立てて刺さるような鋭さと強さがあります。それも、予期しないときに予期せぬ言葉が降ってきますので、大変インパクトがあります。もちろんおっしゃる内容にインパクトがあるのですが、その日本刀のような斬れ味には言葉を失い、時々涙も出ます。

H先生の立ち居振る舞いを拝見していますと、先ほども申し上げたように、大河が流るるが如し。ゆったりと構えて全てを見渡しておいて、一撃。大空をゆったり舞っている鷹が地上に小さな獲物を見つけて瞬時に飛びかかるときのようでもあります。

H先生の言葉には一切の無駄がありません。ゆっくり、穏やかに言葉が出てくるのですが、全てに意味がある。ありすぎて取りこぼしてしまうことも多いですが、スピーチ的に振り返りますと、無駄がなく、的確なときに最適な言葉が降りてきます。

言葉はときに刃。かくあるべし・・・。

これぞ影響力、と呼べるものなのではないでしょうか。

抜かりなく言葉を選ぶ。ここに注力するだけでも、スピーチに大きな違いが生まれることでしょう。

社長のためのスピーチトレーニング 「誰に何を話すか」の戦略

「誰に、何を話すのか」の順で

「来週スピーチですね、どんな準備をされていますか?」

こう質問をするとほとんどの場合、

「何を話そうかと考えています」

何を話すか、真っ先に木になることです。でもここでちょっと立ち止まってください。その前に肝心なことがあります。スピーチプレゼンの場における主役は話し手ではなく聞き手。

「何を話すか」を「誰に何を話すか」に置き換えてください。

中国の春秋時代の思想家・孫武が書いた『孫子』という兵法書はあまりにも有名ですが、そこにもあります。

「彼を知り己を知れば百戦危うからず」

スピーチに臨むときの考え方も、まったく同じです。話す前に聞き手がどんな人たちなのか。それを忘れては話の内容を考えることはできません。

聞き手は

  • どんな人たちか。
  • 話を聞く目的は。

そして、

  • あなたはなぜ話すのか。

ビジネスでも、お客様は誰でどんなニーズがあるか、を考えるように、スピーチでも同じ思考回路で挑めば、聞き手に提供するスピーチ内容に近づけます。。

聞き手は様々な方がいらっしゃいますが、大抵、ある共通の属性や傾向があるはず。聞き手に関する情報を収集し、聞き手が今どんな状況にあるのか。判断すれば合理的に内容を考えられるでしょう。

スピーチの考え方は孫子の兵法と、ビジネスと同じです。どんな人を対象に商品を生産し販売するのか。事前のマーケティングは綿密な戦略を練るうえで欠かせないこと。

この考え方を、スピーチの『話のマーケティング』と呼び、お客様のスピーチを支援する上でもっとも大切にし、欠かせない基礎に据えている取組みです。

 

社長のためのスピーチトレーニング 緊張した時のスタート法

本質的な解決策は事前準備

スピーチで緊張して話せない問題。解決方法はズバリ、事前準備すること。

とは言っても、それでも緊張する場合もありますし、予期せぬ本番で準備の暇などないこともあるでしょう。

「とっさのスピーチが多くて、嫌なんですよね・・・」

わかります。ですがこれもトップのお立場だからこそ。どんなスピーチでも影響力を発揮する登壇チャンス!肚をくくって前向きに挑んでいただきたい。

社長だからこそ効く、緊張対策を書いてまいります。

 

緊張した自分を受容し、打ち明ける

緊張はやる気の証拠。私はそう呼んでいます。どうでも良いことには人は関心も示さないし緊張もしません。ですから、

  • 緊張した→緊張はやる気の証→これでいいのだ(=緊張している自分を受け入れる)

緊張に抗おうとするとますます緊張します。だからまずは「あ、緊張しているな」と観念し「これでいいんだ」と受け入れてください。そのあと「さてどうするか」肚を決めてかかりましょう。

 

緊張時のスピーチのスタート法

緊張した状態で話し出すことになります。ここでは、あらかじめ事前準備してある設定です。

「みなさん、こんにちは。お久しぶりです。
今日はお集まりいただきまして、ありがとうございます。」

ここまでは当たり前の言葉ですから、なんとか話せるでしょう。次がポイントです。思い切って、いまの気持ちを正直に打ち明けてしまいましょう。

「・・・こうして大勢の皆さんを前にしますと、やはり、緊張しますね。」

笑顔で話せるようなら聴衆からも笑いが出るかもしれません。でもそれを狙ってはいけません。あくまでも自分に正直に、ただありのままに、です。「緊張している」と正直に打ち明けることで聞き手が共感します。誰だってこんな場面では緊張しますから。

社長が本音を打ち明けるには勇気がいるかもしれません。でも、素直になってみる。社長としての立場を乗り越え、一人の人間である姿が見えてくる。すると、そうか、こういう人なんだな、と打ち解けやすくなります。緊張とはその場に馴染めないときに起こるもの。ですから、共感が起こることによって場に馴染むことができ、だんだん、落ち着いてきます。

ここまで話せたのですから、お膳立てはできました。ここからが勝負どころです。いくぞ、と覚悟を決めましょう。

「さて……

今日はたいせつなお話をしようと思い、一週間前から準備をしてきました。
どんなお話だろうと期待されているかもしれません。では、本題に入ります」

大事な話の前に本音を暴露し、自分も場も緩める。共感を生んだ次の瞬間、ぐっと丹田に力を入れて本題に入る。このギャップがインパクトになって聞き手がぐっと引きつけられるのです。いい滑り出しですね。

事前に準備して練習してあれば、冒頭で緊張したとしても落ち着いて話せるものです。練習の分だけ、話すことを体が記憶しているからです。

事前練習、だからしっかりやっておきたいですね!

 

あえてゆっくり話す

緊張しているときは呼吸も浅く、早くなっています。そのまま話すと早口になり、自分でもその早さに焦りを感じ、声もうわづります。そしてますます緊張する。緊張のデフレスパイラルに入ってしまいます。

だからこそ、あえて、ゆっくり、ゆっくり、話してください。ゆっくり話せば呼吸もそうなります。呼吸が落ち着けば、やがて緊張もほぐれやすくなる。

社長のお立場ですと、スピーチの声は「ゆっくり、大きく、低く」が最適です。年齢性別問わず、古今東西これが良いのです。だからこそ「ゆっくり」は社長らしい話し方!これでいいんだ、そう思いながらゆっくりと話しましょう。緊張が落ち着いて来ます。

ゆっくり、というのは、

  • 一つの言葉を繰り出す速度をゆっくりにする
  • 次の言葉を繰り出す前の、言葉と言葉の間の「間(ま)」をたっぷりにする

この双方です。普段から早口気味の方は急にゆっくり、と言われてもできません。その場合は、間をたっぷりと取る、これを実践しましょう。

 

ここまでくれば相当落ち着いてくるはずです。

社長だからこそ効く、本音を話すこと、ゆっくり話す、の方法です。ぜひお試しください。

緊張するのは当然のこと。

そんなご自身をぜひ受容して、緊張というパワーを上手に変換してください。

応援しております。

 

社長のためのスピーチトレーニング 話しやすい環境にする

スピーチを成功させるには事前準備が何よりも大切。ですが、誰もが意外と見落としてしまう準備項目が・・・それは「話す技術そのもの」ではなく、話す環境に関することです。

 

ノイズの種類

音響機器にノイズリダクション機能というものがあります。より良い音を楽しむために「ノイズ=余計な音」を取り除くもの。スピーチにも様々な「ノイズ」が発生します。

  • 心理的ノイズ例:聞き手の反応が気になる、スピーチへの強い苦手意識、準備不足による不安など
  • 物理的ノイズ例:外部からの騒音、場にふさわしくない服装、着心地の悪いスーツ、スピーチを聞くことに適さない環境や会場、話し手の顔が見えない照明、見づらいスライド資料、マイクの音質が悪いなど

心理的ノイズは個人差があるものの、スピーチが伝わる仕組みを知ったり、自分の行動によって軽減されやすい。

ところが多くの物理的ノイズは、話し手の意図とは離れたところで生じるものが多い。毎回違う形で生じるため、こちらの対応の方が厄介です。ほんの些細なことがノイズになってしまうこともあるため「やっぱり事前にもう少し考えておくべきだった」となってしまうことが多いものです。

これらをなるべく事前に防ぐ、取り除くようにします。するとぐっとスピーチしやすくなり、より伝わるようになります。

 

ノイズが発生したスピーチ実例

例えばこんなことがありました。

ある高級ホテルの宴会場でプレゼンテーション。某企業の主催で、クライアントが招かれてプレゼンをする趣向でした。私のお客様も登壇されました。念を入れて事前準備をし、本番に挑みました。

プレゼンが始まると・・・私のお客様が話す声と共に、コツ、コツ、靴音が良く聞こえます。五つ星ホテルでしたが舞台は仮設の板張りで、靴音がしっかりマイクに音を拾われていました。こんなことは初めてで、困りました。

私のお客様はアクティブに動いて話をされる方。そこがプレゼンにインパクトをもたらす要素でもあったのですが、歩く度にノイズを産むことになってしまったのです。少しなら気になりません。ですが、終始、コツコツ、コツ、コツ・・・。舞台状況を把握しきれず事前にアドバイスできなかったのは悔やまれました。

事前にリハーサルでこの状況を把握できていたら、例えばこうアドバイスできたでしょう。「靴音が出ます。歩くことを減らして、その分、声のメリハリやジェスチャー、表情で豊かに話すようにしましょう」と。

 

回避できない、会場のノイズ事例

新規オープンしたホールでこけら落としのスピーチされたお客様に同行したときのこと。素晴らしいホールでしたが、なぜかスピーチが始まると同時に、空調の音が大きく鳴り始めました。ゴーーーーーーーーーーッ。集まった聴衆の皆さんは何度も天井を見上げています。スピーチを始めてしまった私のお客様は、途中で止めることもできないので、何食わぬ顔でお話を続けられました。10分近く、ゴーーッというノイズの中、スピーチをされました。

このような、話し手が回避しようにもできないノイズは、大抵ゲストスピーカーとしてお客様が呼ばれた場面で発生しているように思います。経営者の皆様はこのようなスピーチ場面に出くわすことが少なくないと思います。それでもいい話を期待されますから、やはりトップのご登壇は重責で、大変なことです。

どんな状況であっても、結果的に話が伝わらなかったと感じた話し手は、自分自身に力量不足を感じがちです。ですが、避けたくても避けられないノイズが現実には数多くあることをまずは知っておいてください。

 

ノイズを分析して次に活かす

ノイズが発生したスピーチ経験。これは事後に活かさないと意味がありません。「いい話ができなかった」とスピーカーだけが辛い経験をして終わりにならないよう、状況を分析し、伝わりづらいかった要因をはっきりさせ、次にはそのようなことが極力回避できるよう、フィードバックをしています。

社長のスピーチ、話し手にとってはタフな現場です。どんなノイズにも負けない伝わる力で逆にノイズを利用して良いスピーチができるようになられたら、それは大変素晴らしいスピーチ力!

その例はまた追って書いてまいります。

スピーチの基本、ノイズは除去する!ぜひ徹底して実践し、話しやすい、伝わりやすい場を目指してください。